page icon

Phase4: 一般的な会社への過渡期・第二創業期(上場準備中期)

スライドを拡大する

目的

  • スタートアップ的な動きの早さを維持しつつ、規模拡大と上場準備を進めるための社内体制づくり。
  • 業務を標準化し、属人性を排除することでリスクコントロールをしやすい組織を構築。
  • 外部から多様な人材を受け入れられる環境を整え、企業としての信用力を高める。

全体像

  • 「属人化の排除」と「制度整備」のバランスを取りながら進める。
  • バックオフィス部門(経理・総務・人事・労務・法務・社内IT・広報)と事業部門との連携を強化し、摩擦を最小化する仕組みづくり。
  • 上場を見据えた内部統制や開示体制を整備し、スムーズなIPO準備を行う。

1. 経理・税務

役割

  • 上場準備を見据えた精緻な会計・税務管理の確立
  • 予算管理の高度化と迅速な財務報告体制の確立

具体的な実施事項

  1. 経理システムの見直し
      • システム移行: 上場基準や監査要件に対応可能な会計ソフト・ERPへの移行を検討。
        • 例:連結会計に対応できるシステム、固定資産管理や経費精算システムとの連携など。
      • 運用マニュアル整備: 新システムを導入する際のオペレーションフローやガイドラインを作成。
      • 教育・研修: 経理担当者だけでなく、各部門の経費申請担当者にも新システムの使い方をレクチャー。
  1. 月次決算の精度向上と早期化(クローズ期間の短縮)
      • スケジュール管理: 各部門の取引データ締め切り日を明確化し、遅延防止のルールを策定。
      • 仕訳の自動化: RPAやシステム機能を活用し、定型的な仕訳作業を自動化することで早期化を図る。
  1. 経理業務の迅速化
      • 大口取引の即時承認フロー: 金額ごとに承認プロセスを階層化し、高額案件は迅速に取締役・役員が承認できるワークフローを構築。
      • 内部統制チェックの強化: 重要な支払い・入金については複数人承認や監査法人からの指摘を踏まえたチェック体制を整備。
  1. 管理会計の導入・整備
      • 予実管理の高度化: 予算と実績をプロダクト・プロジェクト単位で分析し、経営陣の意思決定をサポート。
      • 収益管理の徹底: 事業ごとにKPIを設定し、部門責任者が数字を管理できる仕組みを提供(BIツール導入等)。
  1. 経費精算の見直し
      • 精算回数を月2回に増やし、キャッシュフロー負担を軽減: 従業員が立替金に困らないように、精算サイクルを短縮。
      • 経費申請のデジタル化: 領収書の画像アップロードやICカード利用履歴との連携など、ペーパーレス化を促進。
  1. 事業部門が一次対応できる窓口を設置
      • 事業部門サポートチームの設置: 経理関連問い合わせを受け付け、マニュアル化・FAQを充実させる。
      • 一部業務の権限移譲: 日常的な取引確認など、経理部門の負荷を下げるための役割分担。
  1. 外部税理士との連携強化
      • 定期ミーティングの実施: 月次・四半期でのレビューを行い、税務リスクや節税策を随時検討。
      • 移転価格税制や海外展開への対応: グローバル化を想定している場合は、早めに国際税務の専門家と連携。

2. 総務

役割

  • 組織基盤の強化と社内ルールの標準化
  • 労働環境の整備と社内コミュニケーションの活性化

具体的な実施事項

  1. 社内規程・ルールの整備
      • 内部統制の強化: 人事規程・経理規程・情報セキュリティ規程など、企業規模に合わせた規程類の再構築。
      • コンプライアンス教育: 全社員に向けた研修や定期的な情報共有を実施。
  1. 稟議制度の整備
      • 電子稟議システムの導入: 稟議の申請・承認をデジタル化し、承認フローをスピーディーに。
      • 承認基準の明確化: 稟議の種類や金額に応じて、承認者や必要書類を可視化。
  1. 社内イベントの充実
      • 社内コミュニケーション活性化: オンライン・オフラインを組み合わせた懇親会や部門横断プロジェクトを定期開催。
      • 福利厚生イベント: 健康診断やリフレッシュイベントの企画運営などを強化。
  1. 事業部門が一次対応できる窓口を設置
      • 総務問い合わせ窓口の分散: 受付窓口やFAQの作成によって、総務部門に問い合わせが集中しない仕組みを構築。
      • セルフサービスの推進: よくある申請や物品調達など、オンラインで完結できるプロセスを整備。

3. 社内IT

役割

  • IT環境の標準化とセキュリティ強化
  • 社内業務のデジタル化・自動化を推進

具体的な実施事項

  1. PC規格の統一化
      • デバイス調達・管理の効率化: OS・スペックを標準化し、故障やトラブル時の対応を迅速化。
      • BYODポリシーの明確化: 個人デバイスの利用ルールを定義し、情報漏洩リスクに備える。
  1. IT関連ルールの高度化
      • 情報セキュリティポリシーの強化: パスワードポリシー、アクセス権管理、外部クラウド利用ルールなどを策定。
      • サイバーセキュリティ教育: 社員向けにフィッシングメール対策・不正アクセス対策の研修を定期実施。
  1. 社内業務の自動化
      • RPAの導入: 定型的なデータ入力や照合作業などを自動化し、人為的ミスを削減。
      • ワークフローシステムの活用: 経費精算、稟議、勤怠管理などを一元化し、承認フローを可視化。
  1. 基幹システムの選定・導入
      • ERPの導入: 会計、販売、在庫管理、人事管理が一体化されたシステムを導入し、データ連携の精度を高める。
      • 導入計画と移行スケジュールの策定: システム切り替えに伴う業務停止リスクを最小化するためのリリース計画をしっかり設計。
  1. 社内システムの統合・入れ替え
      • 既存システムの棚卸しと選別: 重複システムの統合や、老朽化したシステムの廃止を検討。
      • ベンダー管理強化: 開発委託先やサービスプロバイダとの契約を見直し、費用対効果を最大化。

4. 法務

役割

  • 企業ガバナンスの強化と契約管理の最適化
  • 事業リスクの可視化と迅速なリスク対応

具体的な実施事項

  1. 契約書のテンプレート化・チェック強化
      • 標準契約書の整備: NDA、業務委託契約、販売代理店契約など、頻出契約書はテンプレートを用意し、レビュー時間を削減。
      • クラウド契約管理ツールの活用: 契約書レビューから締結、保管までを一元管理。
  1. ガバナンス資料の展開
      • 社内研修の実施: 事業部門向けに法務ルールや遵守事項をわかりやすく解説。
      • 法改正情報の共有: 新たな法律・規制の施行にあわせて定期的にアップデートを周知。
  1. リーガルチェックのフロー化
      • プロジェクト初期段階からの関与: 新サービスや新規事業の企画段階で法務がレビューを行い、リスクを事前に把握。
      • 承認ルートの簡略化: フロー過剰を避け、スピード感のある意思決定をサポート。
  1. 契約条件のデジタル管理
      • 契約書の電子化: 電子契約システムの導入、電子署名の活用などで事務コストを削減。
      • アラート機能の活用: 更新期限やクレーム・紛争対応時期などを自動でリマインド。
  1. 事業部門が契約業務を一部担当
      • 契約の事前ドラフト: 事業部門がテンプレートを活用して最初のドラフトを作成し、法務が最終チェックを行う。
      • 簡易契約(小口)の権限移譲: 契約金額が一定金額以下の場合、法務部承認不要とするなど。
  1. 事業上のトラブル管理の仕組み化
      • クレーム対応フローの整備: 法務・カスタマーサポート・事業部門が連携し、迅速に対処できる体制を構築。
      • 幹部・経営陣への定期的報告: トラブルの状況や対応策を定例会議で共有し、リスクの顕在化を防ぐ。

5. 人事・労務

役割

  • 組織の拡大に伴う採用戦略の見直し
  • 従業員満足度の向上と定着率の強化

具体的な実施事項

  1. 外部採用比率の上昇
      • エージェント活用・リファラル採用の強化: 社員経由の紹介制度を整え、インセンティブ設計を工夫。
      • ダイレクトリクルーティング: スカウト型の採用やSNSを活用した候補者発掘を推進。
  1. 採用広報の見直し
      • ブランディングの強化: コーポレートサイト・SNSでの情報発信を充実させ、会社のビジョン・ミッションを明確に打ち出す。
      • 採用ページのリニューアル: 候補者が知りたい情報(福利厚生、評価制度、社風など)をわかりやすく掲載。
  1. 従業員が求める要素の変化に対応
      • 安心感・安定志向の制度整備: 社員のキャリアパス、福利厚生(健康保険、確定拠出年金など)を充実。
      • ワークライフバランス施策: フレックス制度やリモートワーク、休暇制度の拡充などを検討。
  1. 給与水準の向上を検討
      • 市場水準との比較調査: 同業他社や業界平均と比較し、人件費予算と昇給率を計画的に見直す。
      • 業績連動型報酬の導入: 会社・個人の成果に連動するボーナスやインセンティブ制度を設計。
  1. 新卒採用の検討開始
      • 大学との連携・インターンシップ: 長期的な育成を視野に、早期に優秀な学生との接点を確保。
      • 研修プログラムの構築: 新卒向けのOJT・メンター制度などを整え、早期戦力化を支援。
  1. 正社員化・契約社員化の推進
      • 業務委託比率の低下: コア業務を担う人材は正社員化することで組織力を安定化。
      • 雇用形態の見直し: 一定期間後の正社員登用制度の整備や評価基準を透明化し、モチベーションを高める。

6. 広報

役割

  • 企業イメージの再構築とブランド価値の向上
  • 社外向けの情報発信強化

具体的な実施事項

  1. リブランディングの強化
      • スタートアップイメージからの脱却: 会社ロゴやスローガン、広報資料などを再設計し、「第二創業期」のメッセージを発信。
      • ステークホルダーへの周知: 取引先・投資家・求職者などに向けて、一貫したブランディングを提供。
  1. メディアリレーションの強化
      • プレスリリースの戦略的配信: 新サービスや大きな組織変更などの情報を、業界紙やニュースサイトに継続的に発信。
      • 取材対応の整備: 広報担当窓口の一本化や経営陣・専門家(CFO・CTOなど)のインタビューを積極的にアピールし、露出機会を増やす。

まとめ

Phase4のポイント

  1. 業務の標準化と内部統制の強化
      • 上場準備に必要な経理・法務体制やシステム整備を進め、外部監査やコンプライアンスに対応可能な環境を整える。
      • 部門間での業務フローを明確化し、手戻りや属人化を最小化する。
  1. 採用戦略の見直しと組織の安定化
      • 外部採用を増やしつつ、長期的な育成施策を強化し、組織としての一体感と専門性を両立。
      • 従業員満足度を高め、離職率を低減するための労務・制度・給与設計の充実を図る。
  1. IT・法務・広報の高度化による企業基盤の強化
      • 情報セキュリティや契約管理の仕組みを洗練させ、リスクを可視化・コントロール可能にする。
      • 社外への発信力(広報活動)を高め、ブランド価値を向上させることで、上場や事業拡大に向けた信用力を高める。

一般企業への移行期で求められる取り組み

  • 制度設計: 組織が大きくなっても一貫性のあるルール運用ができるように、柔軟かつ明確な制度を整える。
  • 業務標準化: 部門間協力の促進と属人リスクの軽減を実現するため、マニュアル化やワークフロー構築を徹底。
  • IPO準備視点: 投資家や証券会社、監査法人からの要請に対応できる管理体制と開示体制を整備。
これらの施策を体系的に進めることで、会社全体が「スタートアップ」から「一般的な上場準備企業」へとスムーズに移行し、より持続的かつ安定的に事業を拡大できる基盤が整います。上場後も見据えた信頼性の高い会社運営を目指し、Phase4を通じて企業全体の成熟度を高めていくことが重要です。