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Phase1: 創業初期のバックオフィス整備

Phase1: 創業初期のバックオフィス整備

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総論

  • 少人数(1~2名)での兼務を前提とした運営
    • 経営陣、あるいは限られた社員が複数のバックオフィス業務を掛け持ちするケースが大半。
    • 例)経営者自ら経理業務を行う、人事と総務を兼務する…など体制はフレキシブルに変化しうる。
  • 幅広い業務をこなせる柔軟な人材の重要性
    • 創業期は各専門業務に専任スタッフを置く余裕がないため、複数の分野に対応できる「ゼネラリスト」が求められる。
    • 経理・総務・人事などを一通り把握し、最小限のリスク回避ができる知識を持つ人材が重宝される。
  • 事業成長に伴う専門性の必要性
    • 創業期はスピード感重視でスタートするが、事業が軌道に乗り始めると取引規模や社員数が拡大。
    • 税理士・社労士・弁護士などの専門家との連携や、自社での専任担当採用を検討するタイミングが訪れる。
  • 「正確性」よりも「スピード」「柔軟性」を重視
    • 売上や経費の記録、契約書レビュー、人事制度づくりなどを完璧に行うことが理想的でも、限られたリソースでは非現実的。
    • 急速に変化するビジネス環境に合わせ、最小限のミスで素早く対応していく姿勢が必要。
  • 創業初期のバックオフィス整備が事業推進を支える基盤になる
    • 試行錯誤しながらも経理・法務・労務を適切に処理しておくことで、資金調達や採用などの重要局面で大きなトラブルを回避できる。
    • この段階での経験が、次のフェーズ(事業拡大)での体制構築に活かされる。

各部門の業務内容

① 経理・税務

担当者: 非専任(他の業務と兼務)
  • 経営者やバックオフィス担当が、売上管理と支出管理の両方を兼務するケースが多い。
業務内容
  • スプレッドシートや会計ソフトを活用した簡易的な経理処理
    • 仕訳の入力や支払・入金の把握をリアルタイムで行う。
    • 創業期は無料または低コストのクラウド会計ソフトを選ぶことも多い。
  • 売上・支出の記録、キャッシュフローの管理
    • 現金・銀行口座・クレジットカードなど複数経路の収支をまとめて管理。
    • 資金ショートを防ぐため、日次・週次でキャッシュ残高をチェック。
  • 領収書や請求書の整理、経費精算
    • オンライン領収書やスマホスキャンを活用し、紙媒体を最小化。
    • 経費精算フローを早期に整備し、従業員の不満を軽減。
  • 予算管理と資金繰りの調整
    • 大まかな事業計画に基づき、予算と実績の差分を把握し意思決定に反映。
    • 創業当初は資金繰りに余裕がないケースが多いため、綿密なキャッシュフロー予測が必須。
  • 月次・年次決算の準備
    • 月次決算で資金や収益の状況をタイムリーに把握。
    • 年次決算は税務申告や融資判断にも影響するため、必要書類を早めに揃える。
外部リソース
  • 税理士
    • 税務申告や財務アドバイスを受けるパートナーとして契約が一般的。
    • 創業期向け割引プランを提供する事務所もある。
  • クラウド会計ソフト
    • freeeやマネーフォワードなどで記帳・レポート出力を効率化。
    • 自動連携による仕訳提案機能などで担当者の負担を軽減。

② 総務・法務

担当者: 非専任(他の業務と兼務)
  • 事務作業全般、オフィス関連手配、法的書類の管理などを一括して対応。
業務内容
  • 総務関連
    • 来客対応、電話・メール対応
      • お客様や取引先からの問い合わせ窓口として、会社の第一印象を左右する重要な役割。
    • オフィス環境の整備(備品管理・発注、清掃体制の構築)
      • スタートアップや小規模オフィス特有の課題(備品管理、共有スペースの整理など)を解決。
      • コロナ禍以降はリモートワークやフレックスタイムなど新しい働き方にも対応が必要。
    • 郵送物・社内文書の管理
      • 書類紛失防止のため、フォルダ管理やクラウドストレージへのアップロードなどルールを整備。
    • 社内情報共有・コミュニケーションツールの整備
      • Slack、Chatwork、Google Workspaceなどを検討・導入し、メンバー間のやり取りを円滑化。
  • 法務関連
    • 契約書のドラフト作成、レビュー、テンプレート化
      • 業務委託契約書やNDAなどはテンプレートを整備して対応スピードを上げる。
      • リスクが高い契約(資本提携、投資契約など)は弁護士のチェックを受ける。
    • 事業スキームの整理、法的リスクのチェック
      • 新規事業やサービス開始時に、業界法規制の有無や利用規約の確認が必要。
    • 企業法務(取締役会・株主総会の対応、議事録作成)
      • 創業初期でも必要に応じ取締役会や株主総会を行い、正式な議事録を作成。
      • スタートアップでは開催頻度を抑えるケースもあるが、法的要件の確認は必須。
外部リソース
  • 弁護士・司法書士・行政書士・弁理士
    • 契約書修正、商標・特許出願、会社登記の手続きなどを必要に応じ依頼。
    • 「顧問弁護士」を設置するかは事業規模やリスクの大きさで判断。
  • 契約管理システム
    • 契約書をPDF化して電子管理し、締結漏れや更新漏れを防ぐ。
    • クラウドサイン等の電子契約サービスで押印や郵送の手間を削減。

③ 人事・労務

担当者: 非専任(他の業務と兼務)
  • 採用業務、勤怠管理、社会保険関連の手続きなどを一括で対応。
業務内容
  • 採用業務
    • 求人情報の作成・投稿、採用広報活動
      • 自社サイト、求人媒体、SNSなどで募集要項を掲載。
      • ベンチャーではリファラル採用(社員からの紹介)も重要。
    • 面接の調整、候補者対応
      • 候補者との日程調整や面接場所の確保など事務作業をスムーズに行い、採用体験を向上。
    • 採用フローの見直し・改善
      • 応募から内定までのプロセスを可視化し、無駄なステップやボトルネックを解消。
  • 労務管理
    • 勤怠管理システムの導入と運用
      • 出勤状況や休暇残数を正確に把握し、給与計算に反映。
      • クラウド型勤怠管理ツールを導入すれば遠隔地の従業員も集計が容易。
    • 給与計算の管理(社労士と連携)
      • 自社で行う場合は労務担当者が給与ソフトで計算。
      • 外注の場合も、データ整理や従業員情報管理は社内で行う必要あり。
    • 社会保険、労働保険の手続き
      • 雇用保険、健康保険、厚生年金などの届け出を期限内に正確に実施。
      • 入退社が頻繁だと社労士と細かく連携が必要。
    • 退職手続き・雇用契約管理
      • 離職票など退職時に必要な書類や精算業務フローを定める。
      • 契約更新や条件変更を管理し、法的トラブルを回避。
    • 社内制度の整備(就業規則、評価制度、福利厚生)
      • 創業初期は簡易的なものからスタートし、従業員増加や組織変化に合わせて改定。
      • 評価基準の明確化は組織のモチベーション維持に不可欠。
外部リソース
  • 社会保険労務士(社労士)
    • 社会保険や各種手続きの代理申請が可能。
    • 従業員数が増えるほど管理が複雑化するため、定期的に相談できるメリットが大きい。
  • HR管理システム
    • 従業員情報、勤怠、給与、評価を一元管理するクラウドサービス。
    • アクセス権限を設定し、適切にデータを共有してセキュリティを確保。

Phase1の特徴

  • 最小限の人員でのオペレーション
    • 経理・総務・法務・人事を1~2名で兼務しながら回すのが一般的。
    • 税理士や弁護士・社労士などの専門家をスポットで活用し、コア業務に集中。
  • スピード・柔軟性を重視
    • 完璧なバックオフィス体制より、ビジネスチャンスへの迅速な対応を優先。
    • 事業環境の変化に合わせ、業務フローを都度見直し・改善する姿勢が大切。
  • 基本的な業務フローの確立
    • 経理の仕訳ルール、契約書管理、勤怠・給与計算などの最小限の手順を整えておく。
    • 次フェーズ(Phase2: 事業拡大)で専任スタッフや高度なシステム導入を検討しやすいよう基盤をつくる。
  • デジタルツールの活用
    • クラウド会計ソフト、HR管理システム、契約管理ツールなどで入力・管理の手間を削減。
    • 創業初期ならではのスピード感で新たなツールを試しやすいメリットもある。
  • 外部リソースの戦略的活用
    • 固定費を抑えつつ、必要時に専門家の力を借りてリスクを最小化。
    • 税務・法務・労務などリスクの高い業務は、信頼できるパートナーと連携を強化。

まとめ

  • Phase1では、不確実な環境の中で事業を前進させるため、少人数体制+外部リソースで柔軟にバックオフィスを整備する。
  • 税務・法務など専門分野は無理をせず適宜プロの力を借り、大きなトラブルを回避。
  • デジタルツールを活用し、ルーティンワークを効率化して事業推進に注力。
  • 本フェーズの試行錯誤・経験が、次のフェーズでの本格的な体制構築をスムーズにする基盤となる。
  • 創業期に最も重要なのは「素早く動き、学び、改善する」こと。大枠を押さえつつ柔軟に対応し、将来の成長に向けたバックオフィスの土台を築く。